医院名:医療法人社団侑思会 自由が丘消化器・内視鏡クリニック 
住所:〒152-0035 東京都目黒区自由が丘2丁目9−6 Luz自由が丘5階 
電話番号:03-6421-2852

医療情報

2025.06.18

LAMN(大腸内視鏡/大腸カメラ)

虫垂粘液嚢腫は、虫垂根部が炎症や腫瘍により閉塞することで、貯留した粘液により虫垂の内腔が嚢状に拡張して形成されるもので、虫垂切除例の0.04-4.19%と比較的稀な疾患です。

これらはWHO分類において、明らかな腫瘍成分を伴うMACA(mucinous adenocarcinoma)と、それ以外のLAMN(low-grade appendiceal neoplasm:低異型度粘液性腫瘍)に分類されます(1)。

LAMNは、虫垂外へ病変が波及すると腹膜偽粘液腫となる進行性の腫瘍であるため、悪性腫瘍として取り扱われており、治療は外科手術が原則となります(2)。

腹膜偽粘液腫は、腹膜偽粘液腫は悪性度の低い癌性腹膜炎の一種と考えられ、根治が難しい疾患ですが、

術後病理がLAMN TisN0M0(Stage0)の症例においても腹膜播種再発をきたした症例が報告されており、慎重な取り扱いや経過観察が必要とされています(3)。

LAMNの症例の中には、急性虫垂炎として治療され、術後にLAMNと診断されたり、大腸内視鏡検査において必ずしも異常所見を示さない例があり、診断が困難な例があります。

以下の症例では、虫垂開口部付近の粘膜下腫瘍様の隆起により発見でき、外科手術が施行され、術後病理でLAMNの診断となりました。

 

参考文献

(1)Misdraji J: Appendiceal mucinous neoplasm. WHO Classification of Tumours Editorial Board. WHO Classification of Tumours. Digestive System Tumours, 5th Ed. International Agency for Research on Cancer, Lyon, p144-146, 2019

(2)大腸癌研究会編:大腸癌取扱い規約.第8版,金原出版,東京,2013,p54-61

(3)Yamaguchi T, Murata K, Shiota T, et al: Study Group of Appendiceal Neoplasms in the JSCCR. Clinicopathological Characteristics of Low-Grade Appendiceal Mucinous Neoplasm. Dig Surg 38:222-229, 2021

文責 院長 岡田和久

 

2025.06.08

AIN(大腸内視鏡/大腸カメラ)

肛門管上皮内腫瘍(anal intraepithelial neoplasia:AIN)は、肛門管扁平上皮から移行上皮にかけて発生する比較的稀な腫瘍の総称で、肛門扁平上皮癌の前駆病変とされています。
主としてヒトパピローマウイルス(HPV)が発生に関与するとされ、高リスク型のHPV感染により異型上皮が発生した後、上皮内癌,進行癌へと進展していきますが 、肛門管扁平上皮癌側からみると9割がHPV陽性であるとの報告もあります1.2)

内視鏡像は隆起型が多く、他に乳頭状、鶏冠状、扁平隆起型などがあり、ルゴール染色では不染帯を呈します。

Narrow band imaging(NBI拡大観察)では、食道異形上皮に類似したドット状・ループ状血管、分布不均一なIPCL(intraepitherial papillary capillary loop)様血管などを示し、範囲や深度の決定に有用である可能性が示唆されています3.4.5)

病理組織診断では、p16やKi67の免疫染色が有用で、p16は高リスク型のHPVに関連した病変で高率に発現し、免疫染色ではhigh grade AINの70〜100%でびまん性に強陽性を示すと報告されていて6)、
WHO分類5版においても、p16染色でブロックパターンに染色されるAIN2/AIN3は、浸潤癌に移行する可能性が高いhigh-grade squamous intraepithelial neoplasia(HSIL)に分類されており、治療対象となります7)。

治療法については、アブレーション、EMR、ESD、トリクロロ酢酸外用、イミキモド外用、フルオロウラシル外用などが有効との報告があり、治療介入により発がん率の抑制効果が示唆されています8)。

最近では転移のリスクが非常に低いと考えられている上皮内癌やAINに対する内視鏡的治療アプローチが可能になっています9-12)。

以下は当院で発見されたAINで、小さな扁平隆起の病変と、広い平坦病変の2病変を合併した例です。生検診断で2病変ともAINの診断となりました。

 

 

参考文献

  1. 1) Darragh TM, Colgan TJ, J Thomas Cox JT et al:The Lower Anogenital Squamous Terminology standarzation Project for HPV-Associated Lesions. Arch Pathol Lab
    Med, 136:1266-1297,2012]

2) Muñoz N, Bosch FX, de Sanjosé N, et al:Epidermiologic classification of human papillomavirus types associated with cervical cancer. N Eng J Med, 348:518-27,2003

3) Kuwano H, Nishimura Y, Oyama T, et al. Guidelines for diagnosis and treatment of carcinoma of the esophagus April 2012 edited by the Japan Esophageal Society. Esophagus. 2015 Jan; 12(1): 1-30. [DOI] [PMC free article] [PubMed] [Google Scholar]

  • 4) Ishihara R, Mizusawa J, Kushima R, et al. Assessment of the diagnostic performance of endoscopic ultrasonography after conventional endoscopy for the evaluation of esophageal squamous cell carcinoma invasion depth. JAMA Netw Open. 2021 Sep; 4(9): e2125317. [DOI] [PMC free article] [PubMed] [Google Scholar]
  • 5) J Anus Rectum Colon. 2022 Apr 27;6(2):92-99. doi: 10.23922/jarc.2021-077. eCollection 2022. Anal Intraepithelial Neoplasia: Precursor of Anal Squamous Cell Carcinoma https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9045852/

6) 高橋雅恵,堀口慎一郎,山澤 翔,他:肛門部尖形コンジローマおよび高異型度肛門上皮内腫瘍の併存例.診断病理,32:136-140,2015

7) Darragh TM, Colgan TJ, Cox JT, et al. The Lower Anogenital Squamous Terminology Standardization Project for HPV-Associated Lesions: background and consensus recommendations from the College of American Pathologists and the American Society for Colposcopy and Cervical Pathology. Arch Pathol Lab Med. 2012 Oct; 136(10): 1266-97. [DOI] [PubMed] [Google Scholar]

8) N Engl J Med . 2022 Jun 16;386(24):2273-2282. doi: 10.1056/NEJMoa2201048. Treatment of Anal High-Grade Squamous Intraepithelial Lesions to Prevent Anal Cancer https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35704479/

9)Chou YP, Saito Y, Matsuda T, et al. Novel diagnostic methods for early-stage squamous cell carcinoma of the anal canal successfully resected by endoscopic submucosal dissection. Endoscopy. 2009 Oct; 41(Suppl 2): E283-5. [DOI] [PubMed] [Google Scholar]

  • 10) Oono Y, Fu K, Nakamura H, et al. Narrowband imaging colonoscopy with a transparent hood for diagnosis of a squamous cell carcinoma in situ in the anal canal. Endoscopy. 2010 Dec; 42(Suppl 2): E183-4. [DOI] [PubMed] [Google Scholar]
  • 11) Kasuga K, Saito Y, Wu SYS, et al. Impact of endoscopic submucosal dissection of an anal squamous intraepithelial lesion with indistinct border. Endoscopy. 2020 Feb; 52(2): E75-7. [DOI] [PubMed] [Google Scholar]

12)Clinical application of endoscopic submucosal dissection for superficially invasive squamous cell carcinoma/high-grade squamous intraepithelial lesion involving the canal anal. Ng HI, Chen BH, Zhang YM, Zhang W, Liu Y, Wang GQ.Tech Coloproctol. 2024 Jul 31;28(1):90. doi: 10.1007/s10151-024-02966-8.PMID: 39085740

文責 院長 岡田和久

 

2025.04.04

SuSA①(大腸内視鏡/大腸カメラ)

Superficially serrated adenoma(SuSA)は比較的稀な、S状結腸から直腸に局在する、褪色または正色調の無茎性または平坦型の病変で、既存のWHO分類などでは分類が困難なものとして報告されました(1)。

KRAS変異およびRSPO融合/過剰発現などの遺伝子異常を伴っていて、traditional serrated adenoma(TSA)の前駆病変と考えられています(1,2)。

sessile serrated lesionとの鑑別は、局在や、内視鏡所見(分葉状で、mucosal capがない)が参考になりますが、

hyperplastic polyp(HP)とは内視鏡所見としての類似点が多く、病変のサイズが小さいものでは内視鏡的にHPと判断されてしまい、HPとして経過観察されている微小病変のなかの一部にSuSAが含まれている可能性が示唆されています(3)。

SuSAから直接浸潤癌へ進展した例の報告もあるため(4)、SuSAと診断された病変は治療が必要となります。

以下は当院で経験された症例で、切除後病理でSuSAと診断されたものです。

 

参考文献

(1)Superficially serrated adenoma: a proposal for a novel subtype of colorectal serrated lesion.

Hashimoto T, et al. 2018 Oct;31(10):1588-1598. doi: 10.1038/s41379-018-0069-8. Epub 2018 May 22.PMID: 29789649

(2)Endoscopic features of isolated and traditional serrated adenoma-associated superficially serrated adenomas of the colorectum.
Mizuguchi Y, et al. Dig Endosc. 2022 Jan;34(1):153-162. doi: 10.1111/den.13992. Epub 2021 May 24.PMID: 33871900
(3)消化器Vol.34 No.5 2022 P950-955-955
(4)Virchows Arch . 2019 Nov;475(5):659-663. doi: 10.1007/s00428-019-02604-x. Epub 2019 Jun 17.
Identification of a novel PRR15L-RSPO2 fusion transcript in a sigmoid colon cancer derived from superficially serrated adenoma.
Mizuguchi Y et al PMID: 31209633 DOI: 10.1007/s00428-019-02604-x

文責 院長 岡田和久

2023.08.12

クラミジア直腸炎(大腸内視鏡/大腸カメラ)

クラミジア直腸炎(CTP) は、C. trachomatis が直腸粘膜に感染することで粘血便、腹痛などを引き起こす感染性の腸炎です。

クラミジア直腸炎の内視鏡像は、イクラ状・半球状小隆起の集簇が典型的で、隆起のサイズは比較的均一ですが、非典型例も多いとされています。

治療の基本は抗菌薬ですが、複数回もしくは長期治療を要する難治例が2割近くあり、一度治癒が確認されても再燃する例が1割くらいにあるとも報告されています。

鑑別には、リンパ濾胞過形成を伴った潰瘍性大腸炎、lymphoid follicular proctitis、リンパ腫の特殊型である multiple lymphomatous
polyposisなどがあげられますが、しばしば診断に苦慮する場合があります。

院長 岡田和久 

2023.07.11

アメーバ性大腸炎②(大腸内視鏡/大腸カメラ)

アメーバ性腸炎についてはこちらもご参照ください。

アメーバ性大腸炎はEntamoeba histolytica嚢子の経口摂取で感染します。直腸と盲腸が病変の好発部位であり、直腸の病変では下痢がなくても血便を来すことが多く、一方で盲腸に限局している場合には無症状のことが多いとされています(1)。日本では便潜血検査陽性のために無症状でおこなった内視鏡検査、人間ドックでの内視鏡で発見される無症候性持続感染者の報告が増加していますが、これらは盲腸に病変がある例が多いともされています(2)。

アメーバを疑った場合においても、1回の検査で診断できないことがあり、ときに診断が確定するまで複数回の検査が必要になることがあります。また、多くの病院では内視鏡検査での治癒の確認または症状の消失をもって治癒と判定していますが、薬剤耐性、再発例の報告があり、内視鏡による治癒判定をしない場合には注意が必要です(3)。

以下は当院で経験されたアメーバ性大腸炎です。

参考文献

1)Progress of Digestive Endoscopy 2002;61:106-7.

2)Am J Trop Med Hyg 2016;94:1008-14

3)Gastroenterol Endosc 2019;61:156-62.

文責・監修 院長 岡田和久

2023.07.04

放射線性腸炎②(大腸内視鏡/大腸カメラ)

 

腹部骨盤内への癌の放射線治療後には、小腸・結腸・直腸に粘膜障害が生じることがあり、晩期障害として数か月後に下血として発症することがあります(放射線性腸炎)。前立腺癌や子宮癌が放射線治療の対象になりやすいことから、部位としては腸のなかでも直腸に生じる頻度が高くなっています。

晩期障害では閉塞性の動脈内膜炎による微小な循環障害が生じることが原因で、粘膜の萎縮と線維化をきたし、これらの変化は不可逆的であるとされています(1)。

治療は程度により異なり、出血が続く場合には一般的にアルゴンプラズマ凝固法による内視鏡治療がよく選択されますが、瘻孔や狭窄を伴う例では他の治療法も考慮されます。

以下は当院で経験された放射線性腸炎(直腸)です。

 

参考文献

1)Gastroenterol Endosc 2010;52:1381-1392.

文責 監修 院長 岡田和久

2023.06.03

大腸アニサキス症

アニサキス症については、以下もご参考ください。

アニサキスは主に胃に感染し、日常診療においてよくみられますが、時に小腸や大腸にも感染します。

腸アニサキスは劇症型が多いとされ、発見契機として腹痛が 64%と最も多く、無症状で偶発的に発見されるケースは 23%と比較的少ないものとされています

(アニサキスは刺入部位を問わず、強い腹痛などの症状がでる場合もあれば、無症状のときもあり、反応は人により異なります)。

以下は、大腸内視鏡検査でアニサキスが確認された例です。上行結腸の粘膜に刺入していました。

大腸アニサキス症の集計では、病変部位は、上行結腸、横行結腸、盲腸の順に多く、右側結腸に多いことが報告されています。

院長 岡田和久

2022.07.28

腸管嚢胞様気腫症(大腸内視鏡/大腸カメラ)

腸管嚢胞様気腫症は、比較的稀な病態で、腸管壁内の粘膜下層などを中心に多発性(大小不同)の含気性気腫を形成するものです

特発性が約15%、基礎疾患(慢性閉塞性肺疾患、膠原病、炎症性腸疾患、悪性腫瘍など)の併存がある続発性が約85%とされています。発生機序は、通過障害などにより腸管内圧が上昇し粘膜の損傷部位から腸管内ガスが侵入するという説、ガス産生菌が粘膜下に進入して発症するなどの説、薬剤(αグルコシダーゼなど)による説などが想定されていますが、いくつか要因が重なり発生するのではないかとも考えられています。

無症状である場合には経過観察となりますが、所見自体は翌年も消えずに残っている場合もあれば、消退傾向となる場合もあり患者さんにより差があります。腹部症状や下血を伴う場合などには、絶食などの保存治療や高圧酸素療法などが考慮されます。

院長 岡田和久

2022.05.29

静脈硬化性腸炎①(大腸内視鏡/大腸カメラ)

静脈硬化性腸炎・腸間膜静脈硬化症(mesenteric phlebosclerosis)は、大腸周囲の静脈に石灰化が生じるためにおこる 血流を鬱滞によって慢性的な虚血性変化をきたし、腸管壁の浮腫、線維化、石灰化、腸管狭窄を起こす疾患です。遺伝的な要因の他、サンシシを含有する漢方薬の長期服用が原因とされています。内視鏡所見では、右側結腸の粘膜の色調変化(暗紫色、青銅色)、浮腫、血管透見消失、半月襞の腫大、びらん、潰瘍、狭小化などが言われており、周囲の大腸・腸間膜静脈に沿った線状・点状の石灰化が確認されると本症と診断されます。

以下はサンシシを含む漢方を長期間服用している方の所見です。深部の上行結腸に、他部位の正常粘膜と比較して色調変化が認められます。

(上の写真:上行結腸、 下の写真:S状結腸)

院長 岡田和久

2021.05.22

骨盤内神経鞘腫(大腸内視鏡/大腸カメラ)

大腸検査では内腔の粘膜異常だけでなく、場合により腹腔内、骨盤内からの異常な圧排所見を観察できる場合があります。

一見しただけでは、粘膜下腫瘍か壁外圧排かは判別が難しい場合もありますが、CTや超音波内視鏡検査などで鑑別が可能です。

以下は当院で経験された、稀な骨盤内の神経鞘腫です。直腸とS状結腸の壁外圧排所見で発見されました。

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