胃悪性リンパ腫④(ピロリ陰性)
胃の悪性腫瘍には胃癌、悪性リンパ腫などがありますが、そのうちリンパ組織に発生する胃マルトリンパ腫(MALT)は、悪性度の低いリンパ腫で、90%近くがピロリ菌と関連があるとされています。
感染症やそれに伴う炎症が発生要因と考えられており、ピロリ菌以外の細菌も原因となる場合があります。
自覚症状に乏しいため、内視鏡検診などで偶然発見されることのほうが多いものの、発見時に、多くの場合において胃のみに病変がとどまっていることが多く、進行が緩やかで悪性度が低いとされています。
CT、PET、骨髄検査などで全身に転移がないことが確認されれば、ピロリ菌が陽性の場合には、経口の抗生物質を服用する除菌療法が第一選択となり、除菌できなかった人やピロリ菌陰性例では、放射線療法が選択され、90%以上が治療可能で、その後の経過は良好です。
汎胃炎(胃カメラ/胃内視鏡)
胃炎の主たる原因としては、ヘリコバクター・ピロリ菌、非ステロイド性抗炎症薬、自己免疫性胃炎(AIG)などがあげられます。
胃炎の局在が胃全体に及ぶ場合を汎胃炎といいますが、当院で、既知の汎胃炎の病態にあてはまらない、オルメサルタン(降圧薬)によると考えられた胃炎を経験しました。
この症例は、がん研究会有明病院の平澤俊明先生に診断・治療をして頂き、原因薬剤の中止により、長期に続いた症状(腹痛、体重減少)の速やかな改善が得られました。
オルメサルタンに関連する消化管障害は、腸炎がよく知られていますが、汎胃炎については海外においてわずかに報告例がみられる程度で(1)、今のところ国内での報告例はありません。
内視鏡像は、既報の自己免疫性汎胃炎に類似していました(2)。
(1)BMJ Case Rep. 2018 Dec 10;11(1):e226133. doi: 10.1136/bcr-2018-226133
(2)胃と腸 45巻4号 p.521-527
文責 監修 院長 岡田和久
食道アカラシア②(胃内視鏡/胃カメラ)
アカラシアとは、胃と食道のつなぎ目付近にある、下部食道括約が開かなくなったり、蠕動運動が障害されることによって、食道から胃へむかう飲食物の通過障害が生じる疾患です。
症状としては、食事のつかえ感や停滞感、逆流による胸やけなどがあり、次第に体重が減少したり、逆流症状による不眠や肺炎などがおこることもあります。
経口内視鏡的筋層切開術(Per-Oral Endoscopic Myotomy:POEM)という内視鏡治療が非常に有効で、2015年に保険収載され、専門施設で行われています。
文責 監修 院長 岡田和久
未分化型胃癌/早期胃癌⑱(胃内視鏡/胃カメラ)
ピロリ菌陰性の未分化型胃癌の教科書的な特徴は、形態的に褪色調の平坦または陥凹性病変とされていますが(1)、
春間・川口病変(良性病変)に類似した、以下のような認識しづらい珍しい形態を示すIIb病変も存在します。
この病変は内視鏡治療で治癒切除が得られました。
参考(1)日本消化器内視鏡学会雑誌 Vol. 58 (4), Apr. 2016
胃底腺型胃癌②/早期胃癌(胃内視鏡/胃カメラ)
胃底腺型胃癌は、従来の胃癌よりもピロリ菌の感染率が低率で、病変が小さいうちから深く浸潤をしやすいものの、浸潤に対して転移の可能性が低い低悪性度腫瘍と考えられています。まだこの腫瘍の予後に関しては不明な点が多く、研究結果が待たれるところです。
以下は、当院で経験された2mm大の胃底腺型胃癌です。
胃底腺型胃癌①(胃内視鏡/胃カメラ)/早期胃癌⑯
胃底腺型胃癌は胃底腺への分化を示す低異型度の分化型腺癌で(1)、WHO分類第5版ではAdenocarcinoma of fundic-gland typeという名称になっており、その中でも粘膜内に病変がとどまるものはOxyntic-type adenomaと呼称されています。胃底腺型胃癌は、H.pylori未感染に発生しやすい胃癌の1つで、今後感染率の低下に伴い相対的に頻度が増すことが予測されています。胃底腺型腺癌の典型的な内視鏡的特徴は,①褪色調・白色調,②粘膜下腫瘍様の隆起性病変,③樹枝状の拡張血管,④背景粘膜に萎縮性変化がみられないことなどがいわれています(2)。大きさに比較して高頻度に粘膜下層浸潤を伴うものの、脈管侵襲や転移のリスクが低いため、さほど悪性度は高くはないとされていて、診断的治療の目的で内視鏡治療が選択される機会が増えています。
以下は当院で発見された胃底腺型腫瘍のうち粘膜内にとどまる、いわゆるOxyntic-type adenomaに相当する1-2mm大の病変です。
参考文献
1)Am J Surg Pathol 34:609-619,2010
2)消化器内視鏡Vol34:86-87,2022
十二指腸乳頭部腫瘍③(胃内視鏡/胃カメラ)
十二指腸には胆汁や膵液が流れこむ十二指腸乳頭があり、まれに同部に腫瘍性病変が生じます。早期では症状に乏しく、健診などで偶然に発見されることが多くなっています。
同部にできる良性腫瘍である腺腫は内視鏡的切除の適応とされおり、一部先進施設で可能です。
以下は当院で経験された十二指腸乳頭部の腺腫です。
十二指腸腺腫⑦(胃内視鏡/胃カメラ)
十二指腸非乳頭部の腺腫(SDET)は比較的よく遭遇する疾患で、それらは早期発見ができれば癌に進展する前に治療ができます。
以下は当院で経験された2-3mm大の十二指腸の陥凹型腺腫です。
最近では先端施設で小さいサイズのものを外来切除(CSP)する臨床試験が行われています。
早期胃癌⑮/自己免疫性胃炎
自己免疫性胃炎には胃癌が合併しやすいとされており、
診断された場合には定期的な経過観察が必要です。
以下は当院初診時に発見された自己免疫性胃炎に合併した早期胃癌です。
食道顆粒細胞腫(胃内視鏡/胃カメラ)
食道の顆粒細胞腫は schwann細胞由来の腫瘍で、中年男性に多く、無症状のことが多いとされています。
下部・中部食道に好発し、多くは 20mm以下で、外観は大臼歯(いわゆる奥歯)様と表現されます。
全体の約5%が悪性ですが、大部分が良性で発育は緩徐であり、小さいものでは経過観察が可能です。
10mmを超えるものについては悪性例があることから、積極的な内視鏡治療が考慮されます。