医院名:医療法人社団侑思会 自由が丘消化器・内視鏡クリニック 
住所:〒152-0035 東京都目黒区自由が丘2丁目9−6 Luz自由が丘5階 
電話番号:03-6421-2852

医療情報

2025.08.11

Double pylorus(胃内視鏡/胃カメラ)

  • 二重幽門は、胃の幽門部から十二指腸球部への副経路が存在するまれな内視鏡所見をいいます。

  • 主には胃と十二指腸の間に形成された瘻孔(fistula)により、上部消化管内視鏡検査の中で、0.001% ~ 0.4%という非常に稀な割合で報告されています(1)。

  • 先天性と後天性に分類され、先天性は発生期における管腔の異常形成によるもので、通路間の組織が正常で潰瘍病変がないのが特徴とされ、多くは無症状で偶然発見されており、特に治療は不要とされています(2)。

  • 後天性は先天性よりも頻度が高く、胃潰瘍や十二指腸潰瘍が進行した結果、胃と十二指腸球部の壁が癒着して瘻孔が形成されるものをいい、NSAIDsやステロイドの使用、Helicobacter pylori(ピロリ菌)感染、糖尿病、慢性呼吸器疾患、SLE、腎不全、ベーチェット病など、潰瘍治癒遅延を引き起こしやすい病態が関連していると報告されています(3、4、5)。

  • 後天性も発見時には無症状のことが多く、穿孔・出血などがなければ、病態に応じてピロリ除菌や原因薬剤の中止、酸分泌抑制薬の投与などで経過をみることになります。後天性の自然経過についての後ろ向き追跡調査によれば、酸分泌抑制薬で治療を受けた場合においても瘻孔は大多数(64%)で開存したままで、27%が中隔が消失して正常幽門と癒合し、閉鎖された例はわずか9%だったとされています(3)。
  • 内視鏡治療や薬物治療が無効な場合、あるいは合併症(出血、穿孔、胆汁逆流など)がある場合には、手術が検討されます。

以下は当院で経験されたピロリ陽性例での二重幽門の症例です。

 

     

    (1)Wiseman SM, Tan D, Hill HC. Double pylorus: an unusual endoscopic finding. Endoscopy. 2005;37:277.  [RCA]  [PubMed]  [DOI]  [Full Text] Lei JJ, Zhou L, Liu Q, Xu CF. Acquired double pylorus: Clinical and endoscopic characteristics and four-year follow-up observations. World J Gastroenterol 2016; 22(6): 2153-2158 [PMID: 26877621 DOI: 10.3748/wjg.v22.i6.2153]

    (2)Wolters VM, Nikkels PG, Van Der Zee DC, Kramer PP, De Schryver JE, Reijnen IG, Houwen RH. A gastric diverticulum containing pancreatic tissue and presenting as congenital double pylorus: case report and review of the literature. J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2001;33:89-91. Lei JJ, Zhou L, Liu Q, Xu CF. Acquired double pylorus: Clinical and endoscopic characteristics and four-year follow-up observations. World J Gastroenterol 2016; 22(6): 2153-2158 [PMID: 26877621 DOI: 10.3748/wjg.v22.i6.2153]

    (3)Hu TH, Tai DI, Changchien CS, Chen TY, Chang WC. Double pylorus: report of a longitudinal follow-up in two refractory cases with underlying diseases. Am J Gastroenterol. 1995;90:815-818.  [PubMed] [DOI]

    (4) Fattahi MR, Homayoon K, Hamidpour L. Double pylorus in a cirrhotic patient: a case report and review of the literature. Middle East J Dig Dis. 2012;4:130-132.  [PubMed] 18.  Costa S, Dias VC, Peixoto P, Machado A, Gonçalves R. Double pylorus. Rev Esp Enferm Dig. 2015;107:377.  [PubMed]

    (5)Lei JJ, Zhou L, Liu Q, Xu CF. Acquired double pylorus: Clinical and endoscopic characteristics and four-year follow-up observations. World J Gastroenterol 2016; 22(6): 2153-2158 [PMID: 26877621 DOI: 10.3748/wjg.v22.i6.2153]

    文責 院長 岡田和久

    2025.04.14

    胃悪性リンパ腫(ピロリ陰性)⑤(胃カメラ/胃内視鏡)

    MALTリンパ腫はリンパ濾胞のmarginal zoneからのmucosa-associated lymphoid tissu由来であり、B細胞リンパ腫の一種です。

    さまざまな肉眼的形態を示し、早期胃癌類似型、胃炎類似型、隆起型などに大別されますが(1)、

    本例のような陥凹限局型の胃MALTでは、内視鏡的に未分化型の早期癌との鑑別が問題になります。

    H.pylori感染が認められる場合には除菌治療が第一選択となり、80%程度が完全寛解しますが、除菌治療が奏功しない場合やH.pylori未感染の場合には、

    限局期(stageIないしIIa)であれば低線量放射線治療が有効です(2)。

    他方でH.pylori未感染であっても除菌治療が有用な例が報告されており、その中にはH.heilmanniiなどのNHPHが関与している可能性を考慮する必要があります(4)。

    本例ではH.pylori未感染に発生した3-4mm大の退色調の陥凹性病変で、生検でMALTの診断となり、放射線治療が施行されました。

    参考症例①

    胃悪性リンパ腫(ピロリ陰性)④(胃カメラ/胃内視鏡)

    参考症例②
    https://www.jiyugaoka-gc.com/medicalinformation/gastroscope/2439/
    参考文献
    (1)Helicobacter. 2006 Apr;11(2):86-95. doi: 10.1111/j.1523-5378.2006.00382.x.
    Comparison of localized gastric mucosa-associated lymphoid tissue (MALT) lymphoma with and without Helicobacter pylori infection
    Taiji Akamatsu et al. PMID: 16579838
    (2)Gut. 2012 Apr;61(4):507-13. doi: 10.1136/gutjnl-2011-300495. Epub 2011 Sep 2.
    Long-term clinical outcome of gastric MALT lymphoma after eradication of Helicobacter pylori: a multicentre cohort follow-up study of 420 patients in Japan
    Shotaro Nakamura et al. PMID: 21890816 DOI: 10.1136/
    (3)消化器内視鏡Vol.33 2021 P848-853
    (4)消化器内視鏡Vol.34増刊号 2022 P172-173
    文責 監修 院長 岡田和久
    2025.03.30

    十二指腸GIST③(胃内視鏡/胃カメラ)

    GISTは中胚葉由来の消化管間葉系腫瘍であり、消化管固有筋層にあるCajal介在細胞(消化管内の食物を運ぶ働きに関係している神経細胞)から発生した腫瘍と考えられています。

    小さいうちには症状はなく、検査で偶発的に見つかることが多いのですが、増大にしたがって出血、腹痛、腫瘤蝕知などを認め、発見にいたることもあります。

    GISTの好発部位は胃が60%、小腸が30%、大腸5%、食道5%といわれており、十二指腸は全体の3-5%とされています(1-4)。

    十二指腸のうち、下行部、水平部・上行部・球部の順に多いとの報告もあります。

    GISTは悪性化する潜在性がある腫瘍であり、GIST診療ガイドラインで、治療の第一選択は基本的に外科切除とされています(5)。

    以下は当院で経験された十二指腸下行脚の十二指腸GISTです。症状はありませんでした。

     

     

    参考症例

    GIST②(胃内視鏡/胃カメラ)

     

    参考文献

    (1)消化器内視鏡Vol35 No4 2024 P522-523

    (2)臨床と研究96 P843-847 2019

    (3)臨床外科74 P889-892 2019

    (4)Gastrointestinal stromal tumors: pathology and prognosis at different sites.

    Miettinen M, Lasota J.Semin Diagn Pathol. 2006 May;23(2):70-83. doi: 10.1053/j.semdp.2006.09.001.PMID: 17193820 

    (5)日本癌治療学会 GIST診療ガイドライン 2022年4月改定第4版 http://www.jsco-cpg.jp/gist/

     

    文責 院長 岡田和久

    2025.03.20

    胃特発性潰瘍② (胃内視鏡/胃カメラ)

    本邦において、特発性潰瘍(IPU) の罹患率が増加している可能性が示唆されています(1、2)。

    IPUの危険因子ははっきりしていませんが、潰瘍の発生部位はH. pylori 陽性潰瘍と比較して、前庭部から十二指腸球部に多く認められ、

    単純な H. pylori 陽性潰瘍と比較して難治性で再発率が高いことが報告されており、

    特に 萎縮性胃炎がなく除菌歴のない患者では、治癒率がより低く、再発が多く認められるとの報告もあります(3)

    難治性であっても最終的に瘢痕化が得られる症例がほとんどですが、日常診療においてもPPIの減量や中止で再発することが多く経験され、

    報告においてもIPUと出血性 H. pylori 潰瘍では、IPU 群において累積再発率、出血率、総死亡率が高いと報告されており

    酸分泌抑制薬投与による再発防止と厳重な経過観察が必要とされています。

     

    参考文献 

    消化器内視鏡Vol.34 増刊号2024 P188-189

    日消誌 2023;120:816―826

    (1)J Gastroenterol Hepatol. 2015 May;30(5):842-8. doi: 10.1111/jgh.12876.PMID: 25532720

    (2)J Gastroenterol. 2019 Nov;54(11):963-971.

    (3)Dig Endosc.  2016 Jul;28(5):556-63. doi: 10.1111/den.12635. Epub 2016 Apr 3

    文責 院長 岡田和久

    2025.03.11

    胃特発性潰瘍①(胃内視鏡/胃カメラ)

    消化性潰瘍の二大要因は、Helicobacter pylori(H. pylori)と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)ですが、これらを要因としない原因不明の消化性潰瘍は、特発性潰瘍(idiopathic peptic ulcer disease;IPU)とよばれます。

    明確な成因は不明ですが、単純な H. pylori 陽性潰瘍と比して基礎疾患の合併が多いこと、難治で再発率が高いことが指摘されています。

    近年 H. pylori の除菌が進むにつれ,消化性潰瘍における IPU の割合が増加しています。

    以下は当院で経験されたIPUの一例です。Helicobacter pylori陰性、薬剤処方歴がない症例でした。

     

    参考文献

    日消誌 2023;120:816―826

    消化器内視鏡Vol.34 増刊号2024 P188-189

    文責 院長 岡田和久

    2025.03.05

    食道胃接合部癌④(胃カメラ/胃内視鏡)

    食道胃接合部・胃噴門部腺癌は、萎縮性胃炎を背景として発生する場合と酸逆流に関連して発生する場合がありますが、

    手術数の増加が報告されており、日本ではHp感染率の低下と、食生活の欧米化などが原因として想定され、今後も酸関連疾患として増加することが予想されています(1、2)。

    この領域では、胃の他領域に比較して進行がんで発見される割合が多いのが特徴で、内視鏡的な早期診断が容易でないという点に加え、生物学的に悪性度が高い可能性が示唆されています(3)。

    以下は当院で経験された胃食道接合部癌(Type4)です。

    参考文献

    (1)Time Trends in Helicobacter pylori Infection and Atrophic Gastritis Over 40 Years in Japan. Kamada T et al. Helicobacter. 2015 Jun;20(3):192-8. doi: 10.1111/hel.12193. Epub 2015 Jan 7.PMID: 25581708 

    (2)消化器内視鏡Vol34. No2. 2022 P266-273

    Yoshimura D et al.al. Gastric cancer without Helicobactor pylori infection other than gastric cardia cancer is less invasive. Gastroenterology 154:S936, 2018

     

    文責 監修 院長 岡田和久

    2025.02.28

    食道胃接合部癌③(胃カメラ/胃内視鏡)

     

    接合部癌は、早期がんでは症状はありませんが、進行するとつまり感や、貧血などの症状がでる場合があります。

    以下も、当院で経験された接合部の進行がんの一例です。

    進行がんでは、外科的手術、抗がん剤治療などの治療選択肢があります。

    文責 監修 院長 岡田和久

    2025.02.21

    食道胃接合部癌②(胃カメラ/胃内視鏡)

    接合部癌は食道と胃の接合部にできる癌です。

    ピロリ菌感染者の減少や除菌の普及により胃酸の分泌能が増加している方が増えていることや、肥満に伴う腹圧上昇などによって引き起こされる逆流性食道炎やバレット食道を背景として発生する癌と考えられています。

    初期は症状に乏しいことが多いため、発見には定期的な胃カメラ(胃内視鏡)検査が必要です。

     

    文責 監修 院長 岡田和久

    2025.02.17

    食道胃接合部癌①(胃カメラ/胃内視鏡)

    食道と胃のつなぎ目の部分(日本では食道胃接合部の上下2cmの範囲をいうことが多い)を食道胃接合部といい、同部に発生するがんを食道胃接合部がんとよびます。

    欧米では比較的多いがんとされてきましたが、日本でも近年増加傾向といわれています。

    原因として逆流性食道炎を背景とした遺伝子異常の蓄積が想定されています。

    これは、ピロリ菌感染者の減少による胃液の酸度の上昇や、食事の欧米化に伴って肥満気味の方が増えて胃液が逆流しやすい状況の方が増えていることなどから、

    食道胃接合部が傷つきやすくなっている方が増えているということで、今後も罹患者数は増加すると予想されています。

    腫瘍は食道と胃の両方にまたがって存在しているため、治療方針に関して食道がんと胃がん、どちらの治療ガイドラインに準じるべきかは結論がでておらず、今後の課題となっています。

    内視鏡的に、非常に見逃されやすいがんとされており、見逃してしまうと、1年後には早期がんから進行がんになってしまうような非常に早い経過をたどることが多いともされています。

    以下は当院初診で診断された接合部がんです。検査時、自覚症状はありませんでした。

    文責 監修 院長 岡田和久

     

     

    2025.02.15

    汎胃炎(アミロイドーシス)②(胃カメラ/胃内視鏡)

    びまん性胃炎(汎胃炎)の鑑別診断には、胃癌やリンパ腫などの腫瘍性疾患、感染症(梅毒、結核、ウイルス)、好酸球性胃炎、薬剤性胃炎(NSAIDs、irAE、ARB)、アミロイドーシスなどがあげられます。

    診断の鑑別には、病理組織学的所見や血清学的検査が役立ちますが、ARB関連胃炎などの特異的な所見に乏しい疾患は、基本的に除外診断となります。

    これらのなかで、アミロイドーシスは,β sheet 状のアミロイド蛋白が全身の諸臓器(心臓、腎臓、消化管など)に沈着して機能障害をきたす疾患群をいい、主にAA、AL、ATTRに分類され、病理組織学なアミロイド蛋白の沈着の確認により確定診断にいたります(1)。

    以下の汎胃炎の症例は、がん研究会有明病院の平澤俊明先生をはじめ、多施設の先生方にご協力を頂き、AL型アミロイドーシス(全身型)の診断にいたりました。

    この疾患の初期では、アミロイドの沈着が軽微なため、内視鏡で明らかな異常を指摘できないことが多く、沈着が増加すると発赤、びらん、点状出血、凹凸不整のそぞう粘膜などの内視鏡像を呈してくるとされています。

    アミロイドの沈着によって組織の循環障害がおこるため、粘膜は一般に易出血性で、内視鏡と粘膜の接触や送気によって粘膜下血腫を形成することもあるとされています(2)。

    全身型のALアミロイドーシスの内視鏡所見は、胃の上皮化腫瘍様隆起、数壁肥厚、ひび割れ粘膜、多発びらんなどの多彩な所見が報告されていますが(3、4)、本症例においても、多発びらん、そぞう粘膜、易出血粘膜などの所見が認められました。

    参考文献

    (1)厚生労働科学研究補助金市難治性疾患克服研究事業アミロイドーシスに関する調査研究班 アミロイドーシス診療ガイドライン2010

    http://amyloidosis-research-committee.jp/wp-content/uploads/2018/02/guideline2010.pdf

    (2)消化器内視鏡Vol.34 増刊号2024 P208-209

    (3)胃と腸 60 (1)P74-77, 2025

    (4)消化器内視鏡Vol.36 No.6 2024 P869-862

     

    文責 監修 院長 岡田和久

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