FAP①(大腸内視鏡/大腸カメラ)
家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis; FAP)は、大腸の多発性腺腫を主徴とする常染色体優性遺伝疾患です。
大腸のポリポーシスとは、大腸全体に100 個以上のポリープを認められる状態をいいますが、FAPは大腸腺腫の個数・密度により、腺腫が正常粘膜を覆うほど発生する密生型(1000個以上)、腺腫が100~1000個の非密生型、腺腫が100個未満のattenuated FAP(AFAP)に亜分類されます。
病名には「家族性」とありますが、FAP の方の約 3 割は 明確な家族歴を認めません。
腺腫の数が100 個以下の場合、AFAP と MUTYH関連ポリポーシス(MUTYH-associated polyposis;MAP)の鑑別が必要となりますが、MAPは常染色体劣勢遺伝の形式をとります。
FAPでは癌化のリスクが極めて高いため、治療は予防的な大腸全摘・回腸嚢肛門(管)吻合術が検討されますが、一部施設では内視鏡による徹底的ポリープ切除の試みがなされているところもあります。
以下は当院で経験されたFAPの一例です。大腸全体に100個以上のポリープが認められました。
クローン病②(大腸内視鏡/大腸カメラ)
クローン病の診断基準には、副所見として「特徴的な胃・十二指腸病変(竹の節状サイン)」が記載されています。
これは、「主に胃噴門部から胃体部の小弯にかけてみられる、襞を横切る亀裂状の陥凹」をいいます。
クローン病では 45~65% くらいの方に竹の節状外観が認められるとされていますが、クローン病以外の疾患や、正常な方でも見られることがあり、必ずしも感度が高いというわけではありません。
以下は、クローン病の方に確認された竹の節状外観です。
クローン病①(大腸内視鏡/大腸カメラ)
クローン病については、当院ホームページ内でも概要をご説明しております。
クローン病では、発熱、下血、体重減少、倦怠感、貧血などの症状の他、痔の症状(クローン・アヌス)を呈することがあります。
腸に所見があっても腹痛などの症状がなく、痔の症状のみの方もおられ、内視鏡検査を受けて偶然診断される例もあります。
以下は当院で経験したクローン病の一例です。
回盲部と直腸に縦走潰瘍、横行結腸に潰瘍瘢痕を認め、潰瘍部からの生検では非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が検出されました。
ベーチェット病①(大腸内視鏡/大腸カメラ)
ベーチェット病(Behçet’s disease)とは、①口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍、②外陰部潰瘍、③皮膚症状、④眼症状の4つの症状を主症状とする、慢性再発性の全身性炎症性疾患で、厚労省指定の難治性疾患です。 診断基準には前記した4つの主症状のほかに、副症状として消化器症状、神経症状、血管炎症状などの記載があります。
病因は不明ですが、内的要因(遺伝素因)に外的因子(環境因子)が加わることで、免疫機能が過剰となり炎症が引き起されると考えらえています。
腸管に潰瘍を伴う場合を「腸管型ベーチェット病」といい、腹痛、下血、血便、下痢、体重減少などの症状がみられる場合があります。部位は回盲部(小腸と大腸のつなぎ目付近)に多く、円形または類円形の深く下掘れした潰瘍(深掘れ潰瘍)を呈するのが典型的とされており、重症例では消化管出血や腸管穿孔をきたし緊急手術が必要となる例があります。
治療は重症度に応じて、5-ASA製剤、副腎皮質ステロイド、分子標的薬などが選択されます。
以下は、当院で発見された腸管ベーチェット病の一例です。盲腸は正常ですが、終末回腸に潰瘍を認めました。
症状としては、病変部位に一致した右下腹部痛の自覚がありました。
神経内分泌腫瘍(NET/NEC)③(大腸内視鏡/大腸カメラ)
NETについては、以下もご参照ください。
以下の症例も当院で発見された、直腸Rbの2mm大のNETです。
このような小さいサイズで発見されれば、より低侵襲な内視鏡治療で治癒が得られます。
SSL④(大腸内視鏡/大腸カメラ)
以下の例も、当院で経験された、比較的若年の方のSPS症例です。
この症例では10mm以上のSSLが深部結腸に多発していた他、S状結腸には腺腫性ポリープを合併しておりましたが、外来で内視鏡切除が可能でした。
SSL③(大腸内視鏡/大腸カメラ)
serrated polyposis syndrome (SPS) は、SSLが多発する症候群をいいます。
以下の3項目のいずれかが該当すればSPSと診断されます。
1.S状結腸より口側に5個以上の鋸歯状ポリープがあり、そのうち2個以上が10mmを超える
2.S状結腸より口側に鋸歯状ポリープがあり、1親等以内にSPS患者がいる
3.大きさに関係なく20個以上の鋸歯状ポリープが大腸全体に分布している
SPSは高頻度に大腸癌を合併することが報告されています。
まだサーベイランス法は確立されていませんが、このような方は厳重な定期的検査が必要と考えられています。
以下の症例は当院で経験されたSPSの症例です。
この症例では20個以上の鋸歯状病変が大腸全体に認められました。
SSL②(大腸内視鏡/大腸カメラ)
SSA/Pは周囲と同色調もしくは白色調の平坦な病変で、右側結腸に好発し5mm以上の病変が多いとされています。
通常視では、表面の粘液付着が比較的特徴的で、表面に二段隆起や陥凹などの凹凸不整を伴ったり、発赤が強い場合には、dysplasiaやがんが併存している可能性が高くなるとされています。
SSA/Pから進展するがんは、比較的急速に進展するとされ、通常の腺腫由来のがんと比較して予後不良との報告があります。
以下は若年者の上行結腸に認められた25mm大のSSA/Pです。
SSL①(大腸内視鏡/大腸カメラ)
鋸歯状病変(Sessile serrated lesion;SSL)とは,病理学的に鋸歯状構造を持つ病変をいいます。
大腸ポリープは、大きく分けて腫瘍性の腺腫と、非腫瘍性の過形成性ポリープ(Hyperplastic Polyp;HP)などに大別され、後者は切除の対象外とされてきましたが、一部において鋸歯状腺管構造に腺腫性細胞異型のある病変を伴う(腫瘍と判断される)鋸歯状腺腫(serrated adenoma:SA)が存在し、がんの一部(microsatellite instability(MSI)陽性大腸癌)にも鋸歯状構造を伴う病変があります。
SSLの中で構造や色調が不均一な病変や、拡大観察で表面構造の一部に(開Ⅱ型以外の)不整構造を伴うものが、危険度の高いSSL(SSA/P with cytological dysplasia)の可能性があり、特にⅤⅠ型pit patternを示す病変は遺伝子変化ならびに組織学的に癌化をきたす可能性があるとされています。
以下の症例は、当院で経験された盲腸の40mm大のSSA/P with cytological dysplasiaの病変です。
潰瘍性大腸炎①(大腸内視鏡/大腸カメラ)
潰瘍性大腸炎については、当院ホームページにも疾患概要をご説明させて頂いておりますので、あわせてご参照ください。
https://www.jiyugaoka-gc.com/ibd/
潰瘍性大腸炎の治療薬のひとつにリアルダという5-ASA製剤があります。
リアルダはpH応答性コーティング、multi matrix technologyという技術で、
小腸では錠剤が崩壊せず、内部の有効成分が盲腸から直腸まで大腸全域にわたって持続的に徐放されるように設計されています。
以下の症例は当院で経験された潰瘍性大腸炎(全大腸炎型)の症例です。
この症例では下血、下痢といった症状や、内視鏡で認められた炎症所見が、内服薬のみで比較的速やかに改善しました。
前段には治療前の様子、後段には治療後の様子をお示しします。
後段の画像では、治療後の粘膜治癒が得られた様子や、リアルダ錠が盲腸で崩壊し、肛門側にかけて薬剤が徐放されている様子がわかります。
治療前
治療後