アメーバ性大腸炎②(大腸内視鏡/大腸カメラ)
アメーバ性大腸炎はEntamoeba histolytica嚢子の経口摂取で感染します。直腸と盲腸が病変の好発部位であり、直腸の病変では下痢がなくても血便を来すことが多く、一方で盲腸に限局している場合には無症状のことが多いとされています(1)。日本では便潜血検査陽性のために無症状でおこなった内視鏡検査、人間ドックでの内視鏡で発見される無症候性持続感染者の報告が増加していますが、これらは盲腸に病変がある例が多いともされています(2)。
アメーバを疑った場合においても、1回の検査で診断できないことがあり、ときに診断が確定するまで複数回の検査が必要になることがあります。また、多くの病院では内視鏡検査での治癒の確認または症状の消失をもって治癒と判定していますが、薬剤耐性、再発例の報告があり、内視鏡による治癒判定をしない場合には注意が必要です(3)。
以下は当院で経験されたアメーバ性大腸炎です。
参考文献
1)Progress of Digestive Endoscopy 2002;61:106-7.
2)Am J Trop Med Hyg 2016;94:1008-14
3)Gastroenterol Endosc 2019;61:156-62.
放射線性腸炎②(大腸内視鏡/大腸カメラ)
腹部骨盤内への癌の放射線治療後には、小腸・結腸・直腸に粘膜障害が生じることがあり、晩期障害として数か月後に下血として発症することがあります(放射線性腸炎)。前立腺癌や子宮癌が放射線治療の対象になりやすいことから、部位としては腸のなかでも直腸に生じる頻度が高くなっています。
晩期障害では閉塞性の動脈内膜炎による微小な循環障害が生じることが原因で、粘膜の萎縮と線維化をきたし、これらの変化は不可逆的であるとされています(1)。
治療は程度により異なり、出血が続く場合には一般的にアルゴンプラズマ凝固法による内視鏡治療がよく選択されますが、瘻孔や狭窄を伴う例では他の治療法も考慮されます。
以下は当院で経験された放射線性腸炎(直腸)です。
参考文献
1)Gastroenterol Endosc 2010;52:1381-1392.
文責 監修 院長 岡田和久
十二指腸乳頭部腫瘍③(胃内視鏡/胃カメラ)
十二指腸には胆汁や膵液が流れこむ十二指腸乳頭があり、まれに同部に腫瘍性病変が生じます。早期では症状に乏しく、健診などで偶然に発見されることが多くなっています。
同部にできる良性腫瘍である腺腫は内視鏡的切除の適応とされおり、一部先進施設で可能です。
以下は当院で経験された十二指腸乳頭部の腺腫です。
十二指腸腺腫⑦(胃内視鏡/胃カメラ)
十二指腸非乳頭部の腺腫(SDET)は比較的よく遭遇する疾患で、それらは早期発見ができれば癌に進展する前に治療ができます。
以下は当院で経験された2-3mm大の十二指腸の陥凹型腺腫です。
最近では先端施設で小さいサイズのものを外来切除(CSP)する臨床試験が行われています。
大腸アニサキス症
アニサキスは主に胃に感染し、日常診療においてよくみられますが、時に小腸や大腸にも感染します。
腸アニサキスは劇症型が多いとされ、発見契機として腹痛が 64%と最も多く、無症状で偶発的に発見されるケースは 23%と比較的少ないものとされています
(アニサキスは刺入部位を問わず、強い腹痛などの症状がでる場合もあれば、無症状のときもあり、反応は人により異なります)。
以下は、大腸内視鏡検査でアニサキスが確認された例です。上行結腸の粘膜に刺入していました。
大腸アニサキス症の集計では、病変部位は、上行結腸、横行結腸、盲腸の順に多く、右側結腸に多いことが報告されています。
早期胃癌⑮/自己免疫性胃炎
自己免疫性胃炎には胃癌が合併しやすいとされており、
診断された場合には定期的な経過観察が必要です。
以下は当院初診時に発見された自己免疫性胃炎に合併した早期胃癌です。
食道顆粒細胞腫(胃内視鏡/胃カメラ)
食道の顆粒細胞腫は schwann細胞由来の腫瘍で、中年男性に多く、無症状のことが多いとされています。
下部・中部食道に好発し、多くは 20mm以下で、外観は大臼歯(いわゆる奥歯)様と表現されます。
全体の約5%が悪性ですが、大部分が良性で発育は緩徐であり、小さいものでは経過観察が可能です。
10mmを超えるものについては悪性例があることから、積極的な内視鏡治療が考慮されます。
早期胃癌⑭(胃内視鏡/胃カメラ)
胃癌と診断された患者さんの約15%は同時に2つ以上の癌が発見されます。
そのため、胃癌もしくは胃腺腫が発見された方は、同時あるいは異時多発の胃癌が発生していないか、入念に観察する必要があります。
以下は、胃の体下部と胃角部に同時に2病変発見された症例です。
①一病変目
②二病変目
監修 院長 岡田 和久
早期胃癌⑬(胃内視鏡/胃カメラ)
ピロリ菌除菌後の早期胃癌は平坦・陥凹型が多いという特徴があり、通常観察では視認が難しい場合があるため、早期で発見するためには、定期的な内視鏡検査が必要になります。
以下は当院で発見された除菌後胃癌です。
腸管嚢胞様気腫症(大腸内視鏡/大腸カメラ)
腸管嚢胞様気腫症は、比較的稀な病態で、腸管壁内の粘膜下層などを中心に多発性(大小不同)の含気性気腫を形成するものです。
特発性が約15%、基礎疾患(慢性閉塞性肺疾患、膠原病、炎症性腸疾患、悪性腫瘍など)の併存がある続発性が約85%とされています。発生機序は、通過障害などにより腸管内圧が上昇し粘膜の損傷部位から腸管内ガスが侵入するという説、ガス産生菌が粘膜下に進入して発症するなどの説、薬剤(αグルコシダーゼなど)による説などが想定されていますが、いくつか要因が重なり発生するのではないかとも考えられています。
無症状である場合には経過観察となりますが、所見自体は翌年も消えずに残っている場合もあれば、消退傾向となる場合もあり患者さんにより差があります。腹部症状や下血を伴う場合などには、絶食などの保存治療や高圧酸素療法などが考慮されます。