FAP①(大腸内視鏡/大腸カメラ)
家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis; FAP)は、大腸の多発性腺腫を主徴とする常染色体優性遺伝疾患です。
大腸のポリポーシスとは、大腸全体に100 個以上のポリープを認められる状態をいいますが、FAPは大腸腺腫の個数・密度により、腺腫が正常粘膜を覆うほど発生する密生型(1000個以上)、腺腫が100~1000個の非密生型、腺腫が100個未満のattenuated FAP(AFAP)に亜分類されます。
病名には「家族性」とありますが、FAP の方の約 3 割は 明確な家族歴を認めません。
腺腫の数が100 個以下の場合、AFAP と MUTYH関連ポリポーシス(MUTYH-associated polyposis;MAP)の鑑別が必要となりますが、MAPは常染色体劣勢遺伝の形式をとります。
FAPでは癌化のリスクが極めて高いため、治療は予防的な大腸全摘・回腸嚢肛門(管)吻合術が検討されますが、一部施設では内視鏡による徹底的ポリープ切除の試みがなされているところもあります。
以下は当院で経験されたFAPの一例です。大腸全体に100個以上のポリープが認められました。
早期胃癌⑧(胃内視鏡/胃カメラ)
胃癌については、以下のURLや、医療情報内にあるトピックも併せてご参照ください。
統計上、胃癌が発見された方のうち、15%くらいの方は胃内に同時に2つ以上の癌が発見されます。
またごく最近のデータでは、初発時に1つしか胃癌が発見されなかった場合においても、胃内の他の部位に新たに胃癌が発生(異時多発)する確率は、たとえピロリ菌を除菌したとしても10年以内に30%程度あると推定されています。
そのため、胃癌もしくは胃腺腫が発見された方は、同時あるいは異時多発の胃癌が発生していないか、入念に経過観察する必要があります。
以下は、胃の体下部と幽門前庭部に同時に2病変発見された症例です。2病変とも内視鏡治療で治癒しています。
① 1病変目:体下部前壁の病変
② 2病変目:幽門前庭部前壁の病変
クローン病②(大腸内視鏡/大腸カメラ)
クローン病の診断基準には、副所見として「特徴的な胃・十二指腸病変(竹の節状サイン)」が記載されています。
これは、「主に胃噴門部から胃体部の小弯にかけてみられる、襞を横切る亀裂状の陥凹」をいいます。
クローン病では 45~65% くらいの方に竹の節状外観が認められるとされていますが、クローン病以外の疾患や、正常な方でも見られることがあり、必ずしも感度が高いというわけではありません。
以下は、クローン病の方に確認された竹の節状外観です。
クローン病①(大腸内視鏡/大腸カメラ)
クローン病については、当院ホームページ内でも概要をご説明しております。
クローン病では、発熱、下血、体重減少、倦怠感、貧血などの症状の他、痔の症状(クローン・アヌス)を呈することがあります。
腸に所見があっても腹痛などの症状がなく、痔の症状のみの方もおられ、内視鏡検査を受けて偶然診断される例もあります。
以下は当院で経験したクローン病の一例です。
回盲部と直腸に縦走潰瘍、横行結腸に潰瘍瘢痕を認め、潰瘍部からの生検では非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が検出されました。
ベーチェット病①(大腸内視鏡/大腸カメラ)
ベーチェット病(Behçet’s disease)とは、①口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍、②外陰部潰瘍、③皮膚症状、④眼症状の4つの症状を主症状とする、慢性再発性の全身性炎症性疾患で、厚労省指定の難治性疾患です。 診断基準には前記した4つの主症状のほかに、副症状として消化器症状、神経症状、血管炎症状などの記載があります。
病因は不明ですが、内的要因(遺伝素因)に外的因子(環境因子)が加わることで、免疫機能が過剰となり炎症が引き起されると考えらえています。
腸管に潰瘍を伴う場合を「腸管型ベーチェット病」といい、腹痛、下血、血便、下痢、体重減少などの症状がみられる場合があります。部位は回盲部(小腸と大腸のつなぎ目付近)に多く、円形または類円形の深く下掘れした潰瘍(深掘れ潰瘍)を呈するのが典型的とされており、重症例では消化管出血や腸管穿孔をきたし緊急手術が必要となる例があります。
治療は重症度に応じて、5-ASA製剤、副腎皮質ステロイド、分子標的薬などが選択されます。
以下は、当院で発見された腸管ベーチェット病の一例です。盲腸は正常ですが、終末回腸に潰瘍を認めました。
症状としては、病変部位に一致した右下腹部痛の自覚がありました。
神経内分泌腫瘍(NET/NEC)③(大腸内視鏡/大腸カメラ)
NETについては、以下もご参照ください。
以下の症例も当院で発見された、直腸Rbの2mm大のNETです。
このような小さいサイズで発見されれば、より低侵襲な内視鏡治療で治癒が得られます。
ラズベリー型胃癌①(胃内視鏡/胃カメラ)
ピロリ菌未感染の粘膜からも胃癌が発生することがあります。
いわゆるラズベリー型胃癌(低異型度高分化型腺癌)も、ピロリ陰性胃癌の一つで、発赤の強い亜有茎性ポリープの形をとることが多いとされています。
このタイプの腫瘍では、発赤したポリープの全てが腫瘍で構成されているとは限らず、ポリープのごく一部のみが腫瘍であることもあります。
写真は、当院で経験されたラズベリー型胃癌です。腫瘍自体は3mm大でしたが、癌の範囲は病理学的にφ1mm程度の範囲にとどまっていました。
十二指腸腺腫/十二指腸がん③(胃内視鏡/胃カメラ)
十二指腸腺腫・十二指腸がんについては、以下もご参照ください。
内視鏡機器および診断学の発達により、十二指腸病変がより発見されるようになってきています。
十二指腸腺腫は、大腸腺腫と同様にadenoma-carcinoma sequenceの経路を経て癌化しうる病変です。
以下の病変は、当院で発見され治療された3mm大の十二指腸腺腫です。
SSL④(大腸内視鏡/大腸カメラ)
以下の例も、当院で経験された、比較的若年の方のSPS症例です。
この症例では10mm以上のSSLが深部結腸に多発していた他、S状結腸には腺腫性ポリープを合併しておりましたが、外来で内視鏡切除が可能でした。
SSL③(大腸内視鏡/大腸カメラ)
serrated polyposis syndrome (SPS) は、SSLが多発する症候群をいいます。
以下の3項目のいずれかが該当すればSPSと診断されます。
1.S状結腸より口側に5個以上の鋸歯状ポリープがあり、そのうち2個以上が10mmを超える
2.S状結腸より口側に鋸歯状ポリープがあり、1親等以内にSPS患者がいる
3.大きさに関係なく20個以上の鋸歯状ポリープが大腸全体に分布している
SPSは高頻度に大腸癌を合併することが報告されています。
まだサーベイランス法は確立されていませんが、このような方は厳重な定期的検査が必要と考えられています。
以下の症例は当院で経験されたSPSの症例です。
この症例では20個以上の鋸歯状病変が大腸全体に認められました。